春休みに入っても、自動車部は朝から活動しています。
丸一日部活に費やせるので、大会までに遅れを取り戻して作業を進める絶好の機会なのです。
この時期は新型マシンを作るのに大忙しです。新型マシンはボディーがないと始まらないので、ボディー班の頑張りどころですが、新型のボディーに合わせてフレームを改造したり、改造したフレームに合わせてエンジンの取り付けパーツを改造したり、一言に『新型マシン』と言ってもやるべきことは山積みです。
そんな中、タイヤ班は泥除けの改良に取り組んでいました。
「これまでの泥除けはエンジンに水がかかるのを完全に防げていなかったり、脱着に時間がかるなど整備性が悪かったんです。」
と話してくれたのはタイヤ班の1年生篠田くん。
以前の泥除けはブレーキ周りの隙間が大きくて、そこからエンジンに水が跳ねてしまっていました。
また、取り付けも結束バンドを使ってフレームに固定する方法だったため、ブレーキ整備のために一度外してしまうと取り付け時に毎回位置決めをして結束バンドも新調しなくてはいけませんでした。
同じタイヤ班の1年生相野谷くんと一緒にどういう形にするか話し合いながら、実物を製作する前に紙で試作品をいくつも作っていました。
できあがったのがこちら。
外してみると上下2つのパーツに分かれていました。
それぞれのパーツがフレームの形にぴったり沿っているので、位置決めに悩む必要がありません。
また以前の泥除けも2つのパーツに分かれていましたが、改良版は結束バンドを使わずパーツ同士をプッシュピンで連結するだけでフレームに固定できるようになり、脱着が容易になりました。(写真はピン止め加工前のもの)
なかなか複雑な形をしているのでどうやって作ったのか聞いてみると、下のパーツは離型フィルムで覆ったエンジンから直接型を取り、上のパーツはペット樹脂で作った型を使用して、下のパーツとフレームと合わせて型取りをしてFRP(ガラス繊維を樹脂で固めたもの)で製作したとのこと。
「こだわったのは、この、ここのラインですね。」
と言うように、エンジンのスプロケットの円形をよけつつ、タイヤのくぼみも見事に再現されていて、とても素人の仕事には見えません。
丸みを持たせるために要所要所にほどよい厚みのあるクッション材を型取りに用いたという工夫点も教えてもらいました。
また全体の素材には加工しやすいFRPを使用していますが、ブレーキ周りは透明のペット樹脂で作ることで、泥よけを取り付けたままでも上から確認しやすくなっています。
出来上がったその日に早速、性能実験に取り掛かりました。燃費には直接影響しないようなことでも実験して評価してみることが大事なのです!
今回製作した泥よけ(A)以外にも、以前からマシンのアッパーカウルに直接取り付けられてある小さな泥よけ(B)も再現して、それと合わせて性能を確認します。
タイヤに糸を巻きつけて、独楽回しのようにそれを引くことで回転させ、その上から水を流してタイヤに巻き上げられた水が泥よけより前側にどのくらい飛ぶかを、前側に設置した厚紙についた水しみで確認します。
実験結果はご覧のとおり。中央に飛び散った水は、巻き上げられた水が上から降ってきたものです。実際は泥除け(B)が取り付けられているアッパーカウルが防いでくれるので上から水が降ってくることはありません。
それ以外、横に飛び散っている様子はほとんどなかったので、今回目指した改良条件を十分に満たすことが分かりました。
製作に携わった1年生の篠田くんは「良いものができた」と満足していました。
時間はかかったようですが、納得のいくものが出来上がっていい経験になったようです。
これからまだもう1台のマシンの泥除けも製作するとのことで、2度目になれば作業も早くなるだろうし、もっとうまくできると思うと張り切っていました。
実際の大会で性能が発揮されるのが待ち遠しいです!