自動車部 溶接の弟子
ボディー班が新型マシンの型作りを行っている横では、それに合うフレームの製作も同時進行で進んでいます。
現在作っているのは「ひじよけ」と呼ばれている部品です。
写真の黄色で囲った部分がひじよけ
本校のマシンは走行時の空気抵抗を減らすためにマシン内部にタイヤを格納しています。回転しているタイヤに腕や服が絡まれると危険なのでガードを設けています。それがこの「ひじよけ」と呼ばれる柱。
ひじよけは角柱をそのままの状態で溶接すると、ちょうど角が腕に当たって痛いと言うドライバーの意見から、火であぶりながら腕が当たる角度に合わせてひねった状態にして、上部には軽量化のために穴を開けて製作しています。たったこれだけの部品にもたくさんの工夫が施されていることに感心します。
現在、溶接は2年生の捧くんが主に担当していますが、そこに弟子入りした1年生の中山くんが、今回は本番溶接に初チャレンジということでその様子を見守ってみました。
ひじよけの本体を加工するところから、先輩が見守る横で作業をさせてもらえました。ひじよけに自然と愛着がわいてきます。
いよいよ溶接本番です！2本あるひじよけのうち、1本を任されることになりました。「頑張ります」と意気込んでいた中山くん。
ところが、なかなかうまく溶接できません。機械の設定がおかしいのかなと細々と設定を変更してみるも、満足のいく結果にならなかったため、試しに先輩の捧くんが一度やってみせると、何の問題もなくうまくいきました。
その後、何度もチャレンジしてみましたが、溶かしすぎて穴が開いてしまうこともありました。開けてしまった穴は先輩に丁寧に埋めてもらいました。
「もっと頑張って一日でも早く捧先輩のようにうまくなりたいです。」と言う中山くんの横で
「俺を目指しているようじゃだめだ」と捧先輩が言います。「俺を超えるくらいの気持ちでいてくれないと」と後輩に期待を寄せます。
本番初挑戦の中山くんの溶接はどうだったか捧くんに聞くと
「昨年の自分を思い出します。怖がって腰が引けているところとか、気持ちがよく分かります。」
とにこやかに笑いながら、温かな目で見守ってくれていました。後輩の失敗にも寛容なのは、過去の自分の経験もあるのでしょうが、失敗してもリカバリーできる技術を身に付けた先輩の自信からくるものなのかもしれません。捧くんも先輩として教えるようになってから、ずいぶん成長したように感じます。
中山くんが一人前になって溶接を任せてもらえるのは、まだ少し先の様です。
それでも、丁寧に手ほどきをしてくれて、優しく見守ってくれる先輩の下で、着実に成長していけるでしょう。
これからもたくさん練習を重ねて先輩を超える技術を身に付けて、来年には中山くん自身が先輩となって後輩を温かく指導してもらえたらと思います。