新型コロナの影響による長い自粛期間を経て、部活動が再開しました。
活動時間や密にならないような活動内容など、いろいろと制限がある中ではありますが、それでも部員たちは久々の部活動に参加して学校生活を充実させている様子でした。
さて、自動車部では毎年、前年度の部長が次の新部長を任命する形で引継ぎが行われています。例年では3年生の卒業式の日に引継ぎ式が行われていたのですが、緊急事態宣言が明けた先日になってようやく、旧部長が来校して直々に任命してくれました。
新部長には3年生から、部活動に積極的でみんなを引っ張っていってくれそうな小関くんと、後輩の面倒見に定評がある捧くんの2人が選ばれました。2人体制にした理由としては、後輩の数が多いため、一人ではまとめきれないと判断したからなんだそうです。それから部長を支える副部長には同じく3年生で明るいムードメーカーの篠田くんが選ばれました。
新しい体制の下で部活動は再開されましたが、本校自動車部が活動の目標としている「Hondaエコマイレッジチャレンジ」については、6月開催予定だったもてぎ大会はもちろん、10月開催予定だった全国大会も中止が決定しました。
「大会が中止になったことはすごく悔しいです。」
と話してくれたのは新体制の幹部3人。
「後輩に託すしかない。これから新入部員も入ってくるし、来年度に向けて活動をしていく中で後輩を育てて、自分たちも一緒に成長していけたら。大会はなくなったけど、自分たちはまだ引退するわけじゃないので、しっかりと爪痕を残していきたい。」と悔しさをにじませつつも、それぞれ活動を続けていく意思を見せてくれました。
一方で2年生部員の大村くんと郡司くんは
「悔しいけど、この時間を有効に活用して来年度につなげられるなら」と前向きです。
学生生活最後の大会が中止になった3年生部員には気の毒ですが、今はこの時間を利用して前向きに取り組むことが、先輩たちへの最高の恩返しになるはずです。
同じく2年生のハサニくんにも話を聞いてみたところ、ほかの部員とは少し視点が違いました。
「活動自粛期間が長かったせいで、作業の感覚がまた分からなくなりました。この作業は感覚がとても大事なのに…」
ハサニくんは新型マシンのボディーの加工を任されています。この日はボディーの型の表面の凹凸をやすって滑らかにする作業に取り組んでいました。自粛期間に入る前にようやくつかんだ感覚が失われていることに戸惑いを隠せない様子です。
ハサニくんにとっては大会が中止になっても、任された仕事は責任をもって最後までやり遂げる、そのこと自体は何も変わらないのだととらえているように感じました。
そう、今年の新型マシンは予定通り作り上げます。エンジンやタイヤの開発や整備も予定通り進めていきます。何も変わりません。
むしろ、変わるのは来年度です。
「大会が中止になったことは本当に悔しい」としながら、「後輩たちが成長できる機会が奪われてしまう。」と懸念するのは3年生の牛玖くん。
大会での経験から得られたものがどれだけ大きいかを実感しているからこそ、その成長の機会が失われたことで後輩たちは来年度には苦労するんじゃないかと案じます。
「卒業しても大会には必ず顔を出します。」
自分たちの成果が現れる場面を目にしたいという想いと共に、後輩たちを見守りたいという優しさも感じられる言葉でした。
いつの代も、悔しさを抱えて卒業していく先輩方を見てきました。
優勝をしても、それを喜びつつ、目標としている記録には手が届かずに、来年こそはと後輩たちに託して今につながります。
先輩たちは後輩に託し、後輩たちは先輩から受け継いだデータや技術を糧に成長していく、この形は何も変わりません。
大会が中止になった今年の自動車部から、部員たちが新しい形で成長していく姿を皆様にお届けしていけたらと思います。