暑い毎日が続いている中、自動車部も毎日活動をしています。
毎年この時期は新しいマシンの製作が佳境に入るころですが、今年は新型マシンが出来上がっているのでどの班も全国大会に向けて時間をかけて改良することができると大張り切りです。
ボディ班は毎年冬にやっている風洞実験にさっそく取りかかりました。
風洞実験は室内を閉め切って換気扇や送風機で外に風を送ることで風洞の中に風を取り込み、走行状態と同じ風の流れを風洞内で再現する実験です。
風洞の脇に空いている小さな穴から細く切ったスズランテープを付けた「タフト」と呼ばれる細い棒を挿し込んで、そのスズランテープの流れをマスキングテープでマーキングすることでマシンの周りの空気の流れを可視化させます。
空気の流れが悪いとその分抵抗になるので、燃費を競う競技の中では重要な要素になってくるのです。
2年生の永長くんはボディー班の仕事の中でも風洞実験が一番好きだと言います。
室内を閉め切って、風を通すといっても風洞の中だけなので、風洞の脇で実験している部員たちは暑くて休憩をはさみながらやっていますが、その時間も惜しむようにタフトを挿し込んではマスキングテープを貼る作業を一人でもいそいそとやっていました。
実験の途中結果を尋ねてみると、
「車高を下げたことでマシンの下側には正面からの空気の流れはほとんどなくて、その分サイドから流れ込んで乱流を起こしているんです。」
大会では良い記録を出しただけに、空気の流れも良いと思っていたのに、予想外の結果に驚きを隠せない様子でした。
新型マシンのコンセプトは重心を低くして安定感を出すことでした。
旧型よりも車高を下げることでボディーの下を流れる空間が狭くなったこと、タイヤの形状が浮き出たことなどが空気の流れの変化のポイントです。
タイヤの形状が浮き出たところも「傾斜がきついからか、空気の流れも急に下がってきます」
上から急に下がってくる空気の流れと下を流れている空気がぶつかりあって乱流を生んでいるところも広範囲に見つかりました。
言ってしまえば改良したポイントがすべて空気の流れを妨げているという結果になったわけです。
これはショックだろうと思いきや「これだから風洞実験はおもしろい」と永長くんは言います。
予想もしていなかった空気の流れが見つかる驚きがあり、そこから次はどうしていけば良いかという方針が明確に分かるのだと言います。
課題が明確になるせいか、むしろうまくいかなかったときの方が生き生きしているようにも思えました。
また、永長くんは昨年から自分たちで考案して作ってきた仕事の結果が目に見えて分かるのも嬉しいと話してくれました。その点で言えば、3年生部員が一番感じていることだと思います。
毎年風洞実験は年度末にやるので、課題研究などで忙しくなる3年生は参加できないことも多いのですが、この時期にやれば3年生も実験に参加することができます。
風洞実験を主導している3年生の秋山くんも、課題だらけの実験結果を見つめながら「予想外ですねー」と本当に面白そうに取り組んでいました。
実験が終われば結果をよく分析して、早速次年度の新型マシンに向けて製作を開始するとのこと。
もっと良いマシンを作るんだ!
夏の暑さにも負けない部員たちの熱気が伝わってくるようでした。