風はまだ冷たいけれど、日差しが温かくなってきました。
部活に顔を出してみると、春の陽気に誘われてボディーも日向ぼっこに出ていました。
植物に話しかけるときれいに咲くと聞いたことがありますが、もしかして自動車部のマシンもそういう信念で作られているのでしょうか!?
「温めることで樹脂と硬化剤の化学反応を促して硬化を早めているんです。」
と説明してくれたのは部長の永長くん。
つい先日までまだ型の成型をしていたと思ったら、春休みに入ってからあっという間に作業が進んでいきました。
型が出来上がった後も、離型処理と言って、型からはがしやすくするために何種類もの薬剤を何層にも塗布していきます。
型に樹脂がしみこまないようにするための薬、型からはがしやすくするための薬、などなど…その中には洗濯糊など、およそ工業とは関係のなさそうなものも使われています。
この作業を怠ると、あとで型から外す時に相当な苦労を強いられるので、あなどれません。
それが終わってからボディーの素材となるガラス繊維を型にかぶせ、硬化剤を混ぜた樹脂で固めていきます。
樹脂に混ぜる硬化剤はその日の気温や湿度によって分量が変化するので、正確に測って混ぜます。こんな時は自動車部員が化学者のようにも見えます。
樹脂をしみこませるためには刷毛を使いますが、刷毛の毛一本が抜けただけでも、それが一緒に固まってしまうと、せっかく綿密に計算したボディー形状が変わってしまうからとピンセットで取り除くなど、なかなか神経を使う作業のようです。
本校自動車部のカウルはこのガラス繊維を樹脂で固めたFRPという素材を3層重ねて作られます。
外形が完成しても、スクリーン(窓)をつけるための穴をくりぬくなどの作業が待っているので、加工しやすいように日光に当てて硬化を促進させていたのです。
カウルと一緒に日向ぼっこをしていると、「あれ?なんで?」とにわかに部長の永長くんが慌てはじめました。
カウルが型から浮いているところを発見したようです。
写真ではしみのように見えるところが、型から浮いているところです。
FRPはFiber Reinforced Plasticsの略で、プラスチックに分類されます。プラスチックは熱を加えると膨張するので、それで型から浮き上がってきたようです。
わき腹などはもう完全に浮いてきていました。これはちょっとした発見でした。
その後、型からはがす脱型作業を行いました。
型とカウルの隙間からエアガンで空気を送り込んで隙間を広げていきます。
これまで型からカウルをはがすのは相当な神経を使ってあんなに苦労を強いられてきたのに、なんだか拍子抜けするくらいあっという間にはがれていきました。
それでも脱型の瞬間は感動的です。
日向ぼっこがよほど気持ち良かったのでしょうか?
植物に話しかけるときれいに咲くように、マシンも手をかけて愛情を注いだ分だけ、何か返してくれるものがあるのかもしれません。
今後のマシンづくりもたっぷりと愛情を注いで、チーム一丸となって目標に向かっていきたいと思います!