9月29日(日)に栃木県のツインリンクもてぎを会場に開催された、本田宗一郎杯Hondaエコマイレッジチャレンジ2019第39回全国大会。全国から137チームが参加したグループⅡ(高校生クラス)に、本校自動車部からも2チームが参加しました。
結果についてはすでに報告させていただいたとおりですが、そこに行きつくまでには多くのドラマがありました。その様子を、部員たちの声を交えて何度かに分けてレポートしていきたいと思います。
まず、本大会はガソリン1ℓだけでどれだけ走行できるかを競う燃費競技です。
実際の競技は1ℓのガソリンを使い切ることはなく、決められた距離を決められた時間内に走行することで、消費した燃料を燃費に換算して順位をつけています。
もちろん、一人乗りで車の形状や材質も燃費に特化したものになっているので単純に比べられるものではありませんが、ご家庭の自家用車だと1ℓのガソリンで20㎞も走れば燃費が良いと言われるのに対して、本大会の上位に入賞する記録は2000㎞/ℓと桁違い。その分、ガソリン1滴の違いが勝負となる熾烈な戦いとなっています。
本校自動車部は、本大会の高校生クラスで毎年優秀な成績を収めてきており、特にここ4年は連続で優勝を飾り、今年は5連覇をかけた戦いとなりました。
「先輩方が築き上げてきたもので、自分たちの代で途切れさせるわけにはいかないというプレッシャーがありました。先生方やクラスメイトからも応援してもらえることも多く、期待に応えないといけないという使命感もありました。」
と話してくれたのは3年生の前﨑くん。大きなプレッシャーを背負いながらの戦いとなりました。
28日(土)には練習走行が行われました。
会場近くに前泊していたとは言え、5時の開場に合わせて4時に宿を出発、指定された場所にテントを張ってピット設営をするところから始まります。
ピット設営が終わると持ち込んだマシンの最終調整が行われます。
以前はタイヤを取り付けたり燃料ホースのエア抜きをしたりと、会場に到着してからの作業も多かったのですが、様々な工夫を凝らして会場での作業量は格段に減りました。
そうすることで物理的にも精神的にもゆとりが生まれ、他の点検作業にも時間をさけるようになったはずだったのですが…
「今までは燃料ホースのエア抜きなどに時間をかけていたのですが、それが軽減された途端、何をやればいいのか思いつかなかった。時間にゆとりができた分、他の作業に時間をかけられたのに…」
とエンジン班の前﨑くんは反省していました。
「今思えば、自分たちがやるべきことを、本当に何も分かっていなかったんだと思います。」
と同じエンジン班で活動している2年生の小関くんも思い返します。
練習走行を終えてみると、Aチームの記録は2035.713㎞/ℓ。
もちろん、十分立派な記録です。けれども、エンジンを改良して実験では良い結果が出て、ついに目標の2500㎞/ℓに手が届くかと期待して参加した大会だっただけに、この記録には納得いくはずがありません。
「昨年の記録より落ちた、やばいなとは感じました。」
と話してくれたのは、夏休みの間、エンジン班の実験にずっと寄り添っていた2年生ドライバーの篠田くん。
「ただその時は、実験と実際の走行では差が出るから、その程度の記録なのかなと思っていました。」
ところがその後、部員たちを打ちのめしたのが、練習走行の順位です。
他校が本校よりも良い記録をたたき出して、練習走行ではAチームが2位、Bチームが3位という結果に終わりました。
「その時はライバル校がレベルを上げてきたんだなと感じました。」と話すのは前﨑くん。
エンジンの実験では調子が良かった分、過信していたのでしょうか。自分たちに改善の余地があるとは思っていなかったようです。
ドライバーを務める2年生の篠田くんは「これまでは(マシンの性能が良い分)ただ乗っているだけで良い記録が出るという感覚がありました。」とマシンの性能を過信するあまり、気のゆるみがあったと話してくれました。
過去に4連覇をしてきたということは、初参加の1年生も含め、誰も負けた経験がないということになります。負けた悔しさや、次は絶対に勝つんだというハングリー精神が足りず、これまで通りにやっていれば勝てるだろうと漫然と作業をこなしてきた結果なのかもしれません。
ここへきて一気に、連覇を途絶えさせてしまうかもしれないというプレッシャーが、部員たちの肩に重くのしかかりました。
「ずっともやもやしていました。何かしなきゃいけないと思っていたけど何をすればいいのかも分からなくて。」
2年生の小関くんが言うように、みんなが不安に感じていました。
さて、部員たちは初めて経験する「負け」をこの先どう乗り越えたのか、そのドラマはまた次回以降に書いていこうと思います。がんばれ、自動車部員!