今月の頭にモーターによるEV練習走行会を経て、今週末にエンジンによる練習走行会を控えた自動車部。
EV走行会が終わってから急ピッチでガソリンエンジン仕様に戻して準備を進めてきましたが、いくつかの作業には見切りをつけて諦めなければいけない部分も出てきてしまいました。
「まずは新型ボディーで参加したかったんですけど、それが間に合いません。」と沈痛な面持ちで話してくれたのは部長の捧くん。
実は新型マシンについては結構前から間に合わないと諦めていました。今年度は休校が続いて作業自体が遅れていたこともあったし、大会が中止になって部員を技術的にも精神的にも育てられなかったというのも大きいような気がします。
その分、他のできることを完璧にしようと取り組んできたのですが、そうもいかないようです。
「新しく作った泥除けには設計ミスが見つかりました。EV走行会でも走行動画の記録ミスや、計測中のストップウォッチをぶつけて停止させてしまうなどのミスがあって…
エンジンの走行会ではそれらのミスをなくしてもう一度後輩たちに大会での一連の流れを伝えられたらと思います。」
エンジンの改良や整備を担当しているエンジン班でも、走行会前には様々なパラメータを調整する予定でしたが、作業工程の中で何度かトラブルに見舞われ、「エンジンがかかるかどうかを確認するだけで精一杯になりそう」と3年生の小関くん。
しかしながら、そんな中でも改良されたポイントはいくつかあります。
近年力を入れているのがエンジン本体の断熱です。エンジンは暖かいほうが負荷が少なく、燃費もいいとされているので、暖まったエンジンの熱を逃がさない構造を研究し続けています。
簡単に言えばエンジンに断熱材を巻き付けるだけなのですが、エンジンと断熱材の間に空間があると断熱効果が下がってしまうので、エンジン本体の出っ張っている部分を削ったり、削れない部分はへこんでいる方を埋めたりしてエンジン本体の凹凸をできる限り少なくしています。こちらの作業はエンジン2機とも完成しました。
またこれまではエンジンオイルを循環させているオイルホースも断熱材の内側に巻き込んでいましたが、それだと断熱材を巻いた後にオイル漏れなどの点検ができないことから、挿入口の向きを変えることでホースを断熱材の外に出すことにしたようです。
そんな小さなことと思われるかもしれませんが、燃費競技というのはガソリン一滴の量を争う世界なので、こういう小さな積み重ねがとても大きな意味を持ってくるのです。
小さなことと言えば、分解したエンジンの整備を終えて組み上げている場面で驚愕の事実に遭遇しました。
エンジン班を率いている3年生の小関くんに「エンジンの各部の締め付けトルクは10回に分けています」と教えられました。
10回⁉
ボルトを締め付けるとき、各部によって締め付けるのに適度な力が存在していて、工業の世界では「適正トルク」として数値が示されています。さらにボルトが二つ以上ついているものを締めていくときは、それぞれを何回かに分けて少しずつ締めていくことが歪めずに締めるコツになります。
とは言え、10回とは…。
自動車科の授業でもエンジンの分解整備を行っていますが、せいぜい2~3回に分けて締めるように伝えている程度です。精度を要求されるようなところでも、頑張って4~5回かなという感覚です。それが、10回です、10回。どれだけ精度がものをいう世界なのか、これだけでも愕然とします。
「どこの班も精度が要求されるのは同じことだと思っています。エンジン班だけが特別精度が高いわけじゃない」という小関くん。
この驚くほどの精度も、本校自動車部のほんの一例にすぎません。タイヤやボディーも重要な部分はどこもそれほど神経を使って設計・整備されているのです。それが、全国大会5連覇中のマシンだというのも、納得です。
いよいよ最後の走行会。来年以降につなげられるように、精一杯頑張っていきましょう。
走行会は11月22日(日)日本自動車大学校で開催されます。チーム員以外の入場は制限されておりますので、直接足を運んでの応援はご遠慮いただいています。