EV競技会を終えて間もない自動車部ですが、片づけも早々に済ませて早速来年度の新車作りに取り組んでいました。
と言うのも今年の新車である緑のマシンはEV競技会でタイヤウォールにクラッシュして前側が大破してしまい、これを修理するにも時間がかかるうえにうまくいくかどうかも確信が持てなかったので、潔く廃車という決定が下され、みんなで前向きに新車作りに取り組む方針が決まったのでした。
毎年、大会にはその年の新車と前年度のマシンの2台で出場するのが習わしになっていますが、今年の新車(緑)が廃車になったことで、来年度の大会には昨年度の赤のマシンがもう一年度活躍することになりました。
これを受けて、昨年の全国大会から赤のマシンを乗りこなしてきたドライバー3年生の石塚くんは「これ以上このマシンが傷つかなければいいんだけど」と愛おしそうにつぶやいていました。
赤のマシンもEV競技会でトラブルに巻き込まれて横転してしまい、泥だらけの傷だらけです。
「口ではポンコツとマシンに悪態をついている石塚先輩ですが、本当は自分の乗っているマシンをすごく大事にしているのが伝わってきます。」
と話してくれたのは一緒にタイヤ班で作業をしていた2年生の水上くん。
今でこそベテランドライバーとして確固たる地位を築いている石塚くんですが、1年生の最初のもてぎ大会での練習走行が終わった時には、緊張からか顔面蒼白で倒れるんじゃないかと周りが心配したのを覚えています。
ドライバーという地位はレースにおいて花形かもしれませんが、その分大きなプレッシャーが圧し掛かるポジションでもあります。石塚くんが時々見せる強気な発言も、そういう不安やプレッシャーに押しつぶされないように自分を鼓舞していたのかもしれません。
今では副部長の伊藤くんが「判断力が高いからレースを任せても安心できる」と太鼓判を押すほど、石塚くんのドライバーとしてのスキルは確実なものに成長しました。
EV競技会でも冷たい雨にさらされてずぶ濡れの泥だらけになりながらも、部員の思いを一手に引き受けて完走した姿には強い責任感や忍耐力も感じられました。
そんな石塚くんはドライバーの仕事だけでなく、普段の部活動でもタイヤの整備作業の中でその力量を十分に発揮しています。
「タイヤ整備に関しては、今ならだれにも負けない自信があります」
そう言うだけのことはあって、「こんなの適当だよと言いながらも精度の高い仕事を早く終わらせる」と部長の厚海くんも感心しきり。
タイヤ整備の中で一番難しい作業はどれか聞いてみました。
「振れとり作業は調子の悪いときは時間がかかってしまいます。でも、普通であればだいたい10分で終わらせられるので苦手意識はありません。」
EV競技会の前にマシンにタイヤを取り付けてモーターで回しているときに「リムの振れがほとんどない」ことを確認するとニヤニヤしていた石塚くん。
普段はあまり素直に喜びを表現しない石塚くんですが、喜びを隠せないほどの出来に満足している様子でした。
タイヤ整備を3年間続けてみて、おもしろいと思えたのはどんなところか聞いてみると「自分のスキルが向上していることが分かることがおもしろかった」と答える石塚くん。
精度が上がったことが数値として現れたり、作業にかける時間が明らかに短くなったり、目に見えてスキルが向上したことが分かるのがタイヤ整備のおもしろいところだと話してくれました。
自動車部の3年生は卒業式の日まで引退はありまんが、課題研究などであまり部活に顔を出せない日も多くなってきます。残り少ない自動車部での活動を楽しみながら、後輩の育成にも力を発揮してもらえたらと思います。